就職氷河期世代はロスジェネ世代とも呼ばれ、厳しい経済環境の中で希望の仕事に就けなかった人が多くいます。氷河期世代の人のための支援策として、政府主導で「就職氷河期世代支援プログラム」が実施され、その中の1つであるリカレント教育に注目が集まっています。
氷河期世代の定義や特徴、支援策の中身について解説します。
氷河期世代(就職氷河期世代)の定義は諸説ありますが、1990〜2000年代に新卒者として就職活動していた世代を指します。2024年時点の年齢としては、30代後半〜50代前半の人が当てはまると言われています。
氷河期世代には第2次ベビーブームに誕生した人が含まれています。しかしながら、1991年のバブル崩壊により有効求人倍率の低下が続き、1999年には0.48倍まで下がりました。そのため、氷河期世代の就職活動は厳しさを極めました。
1994年に「就職氷河期」という言葉が新語・流行語大賞にノミネートされており、当時の社会に大きな影をもたらしていたことが分かります。なお、氷河期世代を「ロスジェネ(ロストジェネレーション)世代」と呼ぶこともあります。
氷河期世代を取り巻く環境として、以下の2つの特徴が挙げられます。
これらの問題は一時的なものではなく、現在も継続しています。一体どういうことなのか、何故そのようなことが起きているのかについて、具体的に解説します。
内閣府の調査による「新卒就職率の推移」を見ると、氷河期世代にあたる1974〜1983年生まれの人は、他の世代と比較し新卒就職率が10ポイント以上低いことが分かっています。
その結果、正規雇用比率も低く、やむを得ず非正規雇用者として働く人が多くなっています。20代で正規雇用者として就職できなかった場合、30代以降に安定したキャリアを形成していくことは難しく、非正規雇用者として働き続ける人の割合が高いとされています。
氷河期世代の人は、バブル崩壊による経済縮小の影響により正規就業のチャンスを逃し、長期にわたって深刻な影響を受けています。
参照:内閣府「日本経済2019-2020 第2章 人口減少時代における働き方を巡る課題(第2節)」
厚生労働省の調査によると、1992年の平均給与は470万円を超えていましたが、その後減少傾向が続き、2009年にはリーマンショックの影響を受けて421万円まで下がりました。2018年には433万円まで回復しましたが、1992年と比較すると40万円ほど低い水準です。
また、国税庁のデータによると、好景気時代と氷河期時代を比較した際に、給与の伸び率に差が見られます。経済成長が著しかった1990年の平均給与の対前年伸び率は5.7%でしたが、バブルが崩壊した1993年の伸び率は-0.6%です。その後も伸び率は低迷が続いています。
氷河期世代の人は、このような平均年収の減少傾向や給与の伸び率の低迷の影響も受けていると考えられます。
参照:厚生労働省「厚生労働省「令和2年版厚生労働白書─令和時代の社会保障と働き方を考える」
参照:国税庁「民間給与統計調査の概要」
氷河期世代の特徴として、以下の2つが挙げられます。
厳しい環境に耐えてきた世代だからこそ、仕事への取り組み方や資格取得に対する考え方に他の世代と違いがあります。こうした世代を取り巻く環境上の特徴は、良い意味で注目を集めています。
氷河期世代の人は、働けることへの感謝が強く、仕事に対してストイックに取り組む人が多い傾向があります。
希望の仕事に就けず自分の意思に反する待遇で長期間働いたり、専門外の職種で働いたりと、耐えてきた期間が長い分、他の世代より我慢強いとも言われています。
経済の低迷が続く中で働いてきた経験があるため、就業後も会社の経営状態や経済動向に敏感で、転職経験がある人も多い世代です。そのため、変化への対応力や柔軟性も高い傾向があります。
氷河期世代の人は就職活動で苦戦した経験があるため、資格を取得して就職活動において優位に立ちたい、専門的な知識やスキルを身につけて「手に職」をつけたいと考える人が多い傾向があります。
経済の混迷が続く時代には派遣切りや会社の倒産も多く、一度就職できても安心とはいえない状況でした。そのため、転職を見据えたスキル獲得の必要性を強く実感している人が、他の世代よりも多いと考えられます。
結果として、非正規雇用者として働いてきた期間が長くても資格や高いスキルを持っている人が多く、企業において即戦力となれる人材が豊富に存在します。
政府は、氷河期世代が抱える就業への課題に対応し、個人の状況に合った支援によって社会的な活躍の場を広げることを目的に「就職氷河期世代支援プログラム」を実施しています。
具体的な数値目標を立てて3年間で取り組むとしており、具体的には以下のような取り組みを行っています。
プログラムの対象者は希望の雇用形態で就業できていない氷河期世代の人で、正規雇用を希望しているにもかかわらずアルバイトや派遣社員で働いている人、社会復帰を希望するニートや引きこもりの人、様々な理由で長期間仕事をしていない人などが含まれます。
参照:内閣官房「就職氷河期世代支援プログラム」
参照:生労働省「就職氷河期世代の方々への支援について」
「就職氷河期世代支援プログラム」の1つでもある「リカレント教育」に注目が集まっています。よく似た言葉に「生涯教育」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。ここではリカレント教育が注目される背景や生涯教育との違いについて解説します。
リカレント教育とは、社会人が仕事で必要な能力やスキルを教育機関などで学び直すことです。「リカレント(recurrent)」には循環する、繰り返すなどの意味があり、学校教育終了後も必要に応じて適宜学習し、「仕事と学習」を繰り返すことによってスキルアップを図ります。
少子高齢化の進行やデジタル技術の進展などを背景に、日本の就業環境は大きく変化しています。会社から専門的なスキルを求められるケースも増えました。
このような変化に対応するためには、社会に出た後も仕事に直結するスキルを、主体的かつ継続的に学んでいくことが大切です。
関連記事:パスメイク「リカレント教育(学び直し)とは?言葉の意味や、やり方などを紹介」
平均寿命が延び、日本人のライフステージが変化したこともリカレント教育の重要性を高めています。
従来のライフステージは、「教育」「仕事」「引退後」の3つのステージから構成されていました。しかし健康寿命が延びたことにより、生涯現役として過ごすライフスタイルへの変化が求められるようになりました。教育、仕事、学び直し、仕事といった段階を繰り返し、ようやく引退後の生活へたどり着きます。
必要に応じてスキルのアップデートをする人とそうでない人の能力の差が拡大していくことが予想されるため、リカレント教育が注目を集めているのです。
リカレント教育と生涯学習は混同して使用されることがありますが、目的に大きな違いがあります。
リカレント教育の目的は、仕事で必要な能力やスキルを磨き、自己実現につなげることです。平均寿命が延びる中で生涯現役を目指して、語学や資格取得、経営知識の習得など、仕事やキャリア形成に役立つ知識やスキルを習得します。
一方の生涯教育は、豊かな人生を送るための学びです。あらゆる学習の機会を含む概念で、 学校教育はもちろん、文化活動やスポーツ活動、ボランティア活動など仕事とは無関係の学びも含まれます。
氷河期世代は他の世代と比較し新卒時の非正規雇用の割合が高く、その後の就業においても苦しい経験をしてきました。一方で、仕事へのストイックな姿勢や忍耐強さなどから、企業も氷河期世代に期待しています。
「リカレント教育」は日本ではまだ浸透していない部分もありますが、生涯を通して自分の能力を発揮し社会に貢献していくためには、学び直しをしながら知識やスキルの習得に努めることが大切です。
リカレント教育を目的とする様々な支援制度を活用しながら、将来のために自分をアップデートしてみてはいかがでしょうか。
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