人生100年時代とは? 必要となる3つのポイントや働き方のヒントを解説

日本の健康寿命は世界においてトップレベルと言われており、2024年現在は既に「人生100年時代」に突入しています。100年という長い期間をより豊かに生き抜いていくためには、これまでとは異なる働き方や学び方を実践していくことが大切です。

本記事では人生100年時代のライフステージの変化に加え、働く上で必要となるポイントや、働き方のヒントを解説します。

人生100年時代とは

「人生100年時代」とは、『LIFE SHIFT』の著書であるリンダ・グラットン氏が本の中で提唱した言葉です。

同書では「先進国の子どもの2人に1人が100歳以上まで生きる時代がくる」と予想しており、日本においては「2007年に生まれた子どもの半数が107歳より長く生きる」という研究結果も紹介されています。

100歳まで生きると仮定すると、仕事だけでなく、余暇の過ごし方や生活に発生するお金など、様々な面に影響が出てきます。そのため、これまでとは異なる生き方を考えなくてはなりません。ここからは「人生100年時代」について、以下の点を詳しく解説します。

  • ライフステージの変化
  • 有形資産・無形資産への投資の重要性

ライフステージの変化

人生100年時代では、従来「教育を受ける時期」「働く時期」「老後」と区切られていたライフステージにおいて、「働く時期」の期間が延びると考えられています。

これまでは60歳で定年し、約20年を老後として過ごすという時代もありました。しかし、人生100年時代は60歳からさらに約40年の期間があります。より豊かに生活するには「老後」とされていたような期間も「働く時期」となってきます。

ただ働き続ける形では消耗してしまう可能性もあるため、人生100年時代は人生のステージに見合った柔軟な働き方、生き方を見つけることが重要です。

有形資産・無形資産への投資の重要性

人生100年時代において充実した生活を送るためには、有形資産と無形資産の形成も大切です。

有形資産とは、お金や株、不動産などの目に見える資産を指します。しかし、人生100年時代に必要な資産は、有形資産だけではありません。肉体的・身体的な健康、家族や友人との人間関係といった目に見えない資産である「無形資産」もまた重要視されます。

無形資産の具体例としては、仕事に役立つスキルや人脈としての「生産性資産」、心身の健康を維持する「活力資産」、環境の変化に対応する「変身資産」の3つが挙げられます。

無形資産があれば人生がより豊かになり、有形資産を増やすことにもつながります。人生100年時代には2つの資産をバランスよく形成していく必要があるといえるでしょう。

人生100年時代の働き方|必要となる3つのポイント

厚生労働省においても、2017年から人生100年時代を見据えた「人生100年時代構想会議」で議論が行われています。

人生100年時代においては、従来の考え方にとらわれない柔軟な働き方を理解して、実践していくことが大切です。ここでは人生100年時代の働き方に必要なポイントを解説します。

  • キャリアオーナーシップの獲得
  • 「定年」や「終身雇用」からの脱却
  • リカレント教育の推進

参照:厚生労働省「政策について|人生100年時代」に向けて」

キャリアオーナーシップの獲得

人生100年時代の働き方では、キャリアオーナーシップの獲得が不可欠です。キャリアオーナーシップとは、自らのキャリアに責任を持ち、主体的に考え行動することを指します。キャリア形成を企業任せにするのではなく、働く個人が主体となってキャリア開発をしていくという考え方です。

人生100年時代は従来と比べて「働く時期」が延びるため、ライフステージに合わせたキャリアを築かなくてはなりません。柔軟な働き方をするためにも、自律的にキャリアを形成し、必要に応じてキャリアをアップデートすることが大切です。

関連記事:パスメイク「キャリアオーナーシップとは?意味や取り組み例を紹介」

「定年」や「終身雇用」からの脱却

近年は社会情勢の変化や人手不足などにより、従来の「終身雇用で定年まで働き、退職後は年金生活をする」といった考え方が通用しなくなっています。

2021年の「高年齢者雇用安定法」の改正では、65歳までの雇用確保(義務)に加え、70歳までの就業機会の確保(努力義務)が追加されました。定年は引き上げられ、働く年数が増えてきつつあります。

過去には終身雇用が一般的だった時代もありましたが、現在は転職者数が増加傾向にあり、定年まで同一の会社で勤め上げることは少なくなっています。定年や終身雇用から脱却することを見越したキャリア形成が必要です。

リカレント教育の推進

人生100年時代に、社会の変化に対応しながら仕事を続けていくためには、リカレント教育を進めることが欠かせません。

「リカレント教育」とは、社会人が仕事で求められる能力やスキルを身につけるために、自主的に教育機関などで学び直すことを指します。

新たなスキルの習得やスキルのアップデート、自分自身の市場価値の向上を意識する中で、社会人としての学び直しも求められます。何歳になっても学ぶ姿勢を持っていれば、キャリアの選択肢を広げることにも繋がるでしょう。
関連記事:パスメイク「リカレント教育(学び直し)とは?言葉の意味や、やり方などを紹介」

人生100年時代の働き方のヒント|社会人基礎力

人生100年時代に求められるスキルの1つに「社会人基礎力」があります。最初に社会人としてのベースを固めておき、その上で専門性の高い能力を磨いていくことで、人生100年時代において高いパフォーマンスを発揮できるようになります。

ここからは、この社会人基礎力について詳しく解説します。

  • 社会人基礎力とは
  • 社会人基礎力に必要な3つの視点

参照:経済産業省「産業人材|社会人基礎力」

社会人基礎力とは

社会人基礎力とは「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱したものです。前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力の「3つの能力」と、それに必要な「12の能力要素」で構成されています。

人生100年時代は従来よりも社会と個人が関わる期間が長くなることから、社会人として仕事をする上で基盤となる能力を身につけておくことが重要です。そのため、新社会人だけではなく、幅広い年齢の人に社会人基礎力の習得が求められています。

社会人基礎力に必要な3つの視点

人生100年時代に社会で活躍するためには、生涯にわたって学習し、スキルをアップデートしていく必要があります。このような背景から、経済産業省は2018年に「社会人基礎力」に3つの視点を加えました。

  • どう活躍するか(目的)
  • 何を学ぶか(学び)
  • どのように学ぶか(統合)

新たな社会人基礎力では、自分自身をリフレクション(振り返り)しながら、3つの視点のバランスを取ることが大切です。ここからは3つの視点の詳細を解説します。

参照:経済産業省「社会人基礎力」

どう活躍するか(目的)

目的は「自己実現や社会貢献に向けて行動する」ための視点です。

自分が今後どのように社会で能力を発揮していくかを考えた上で目的を設定すると、おのずと「何を学ぶか」「どのように学ぶか」が明確になります。反対に目的が設定されていなければ、学びの軸がずれてしまう、仕事に役立つ能力を身につけられないといった可能性があります。

目的の達成に向けて行動するには、社会人基礎力の「前に踏み出す力」の活用が不可欠です。主体性を持ち、時に周囲の人にも働きかけながら、失敗しても粘り強く取り組んでいくことで、結果的に自己実現や社会貢献につながります。

何を学ぶか(学び)

経済産業省によると、学びの視点は「学び続けることを学ぶ」というものです。目まぐるしく変化する社会に対応し、能力を発揮していくために、自分はいったい何を学ぶべきかを考え、常に学び続ける力をつける必要があります。

自分自身に足りないスキルや知識を補い、現在保有している強みを最大化させるには、具体的にどのような学びが必要なのかを「考え抜く力」が欠かせません。特に人生100年時代においては「仕事をしながら学び続ける」という複線的なキャリアが主流になるといわれています。

どのように学ぶか(統合)

統合は「多様な体験・経験、能力、キャリアを組み合わせ、統合する」という視点を指します。

学びを進める上では、ただ新たな知識を身につけるのではなく、これまでの体験や培ってきた能力・キャリアと結びつけて体系的に学んでいくことが大切です。それにより、一から学習するケースと比べて短期間で、より専門的・実践的な能力を育むことにつながります。

周囲の人と協力して仕事上の目的を達成するためには、社会人基礎力の「考え抜く力」や「チームで働く力」を活用し、複数人の能力を組み合わせて統合することも効果的です。

人生100年時代は学びの時代

人生100年時代は、従来と比べて「働く時期」の期間が長期化します。ライフステージに見合った柔軟な働き方にシフトしながら学び続けることは、その後の人生を有意義にするでしょう。

何歳になっても社会から求められる人材になるには、自らのキャリアに責任を持ち、主体的に新たなスキルや能力を学んでいく姿勢が欠かせません。自分自身を振り返り、自己実現や社会貢献に役立つスキルを継続的に学ぶことが、人生100年をより豊かに生きていくための力になります。

まずはご自身の目的を明確にし、何をどのように学ぶかを考えてみましょう。

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