職場の人間関係や目標達成へのプレッシャーなど、ビジネスパーソンは常にストレスを抱えているといっても過言ではありません。そんな中、ストレスへの対応力を向上させるためには「レジリエンス」を鍛えることが有効だと言われています。
ここでは、レジリエンスの定義やレジリエンスが注目される背景、鍛える方法について解説します。
レジリエンスとは、回復力、弾性、復元力、耐久力などの意味を持ちます。もともとは物理学において「外圧によって形が変形した物が、どのくらい元の形に戻ろうとする力があるか」を表す言葉として使用されてきました。
ビジネスにおけるレジリエンスには、「ストレスを乗り越え回復する力」の意味があります。心のしなやかさ、折れない強さといったニュアンスで用いられることもあります。
レジリエンスは、困難な状況やストレスへの認知を変えることによって心に受けるダメージを減少させ、できるだけ早く元の状態に戻すことを目的とするスキルです。
レジリエンスは「外圧による変形を跳ね返す力」のことを指し、ストレスは「外圧によるひずみや歪み」そのものを指します。ストレスよりもレジリエンスの力が上回れば、変形をうまく跳ね返し、元の状態へ戻すことができます。
レジリエンスと似た言葉に「ポジティブ思考」がありますが、ポジティブ思考はどのような局面においても物事を前向きに捉える思考のことです。レジリエンスはストレスの受け止め方を変える力であり、トレーニングによって高めることが可能です。
働き方への価値観の多様化やグローバル化の進展、テレワークの広まりなど、ビジネスを取り巻く環境は急速に変化しています。
このような環境の中、レジリエンスの重要性が高まりつつあります。その理由として、ここでは以下の3点を見ていきたいと思います。
レジリエンスがビジネスにおいても重要とされる理由について、理解を深めていきましょう。
ビジネスをめぐる環境変化が激しい現代において、心身の健康を保つことはすべてのビジネスパーソンにとって大切なテーマです。そのためのストレスの軽減は重要なポイントですが、目標達成へのプレッシャーや職場の人間関係など、仕事をする上でストレスをゼロにすることは難しいでしょう。
しかし、ストレスをゼロにすることはできなくても、レジリエンスを高めることは可能です。レジリエンスを鍛えることで、強いストレスを感じても短期間で元の状態に回復しやすくなれば、心身の健康の維持につながります。
ビジネスを取り巻く環境がめまぐるしく変わる中で、会社や組織にも柔軟な変化が求められています。また、異動や昇進・昇格などによって自分自身の立場や役割に変化が生じることも、働き続ける中では当然起こりうることです。
このような変化に対応するためにも、レジリエンスは必要なスキルです。例えばリーダーやマネジメント層になると、日常の業務に加えて人材育成や組織のマネジメントなど求められることが増え、ストレスを抱えがちになります。このような状況においても、レジリエンスが高ければ、ストレスに負けずに乗り越えられるでしょう。
目標を達成するために必要な要素は様々ですが、レジリエンスはその土台とも言える力です。ビジネスにおいて目標は欠かせないものですが、その達成を目指す中でプレッシャーなどのストレスを感じる人も少なくはないでしょう。また、キャリアアップしていくごとに求められるハードルも高くなりがちです。
プレッシャーを感じても、それを乗り越えていけるレジリエンスがあれば、目の前の課題にもチャレンジする姿勢を保ち続けられるでしょう。また、レジリエンスを高めて上手く感情をコントロールできれば、更なるステップアップも期待できます。
ここからは、レジリエンスがある人の特徴を見ていきましょう。レジリエンスを持つ人の特徴としては以下の4点が挙げられます。
それぞれについて解説します。
レジリエンスが高い人は、発想の転換で上手にストレスをコントロールしながら方向転換していけます。例えば、営業成績が振るわなかったときでもただ落ち込むのではなく、「どうすれば改善できるか」と前向きに問題点を分析し、改善に向けて行動に移していけます。
既存の手法や考えにこだわらない柔軟な思考力と対応力があれば、困難な状況に陥っても逆境を乗り越えやすくなります。
嫌なことがあったり自分の思い通りにいかないことがあったりした場合に、感情的になって怒ったり落ち込んだりしてしまっては、仕事のパフォーマンスに影響を及ぼします。また、感情の起伏が激しい人はそれ自体がストレスとなり、本来の力が発揮できない傾向があります。
一方、レジリエンスが高い人は目の前の出来事に一喜一憂せず、感情を上手にコントロールしています。また、自分なりのストレス解消法を持っている人も多く、落ち込むことがあってもメンタルを早く回復できるケースが多いと言われています。こうした感情のコントロールのうまさは、安定したパフォーマンスの発揮にもつながります。
自尊心や自己効力感が高いこともレジリエンスが高い人の特徴です。自尊心とは、自分をありのままに受け止め、自分は価値のある存在だと感じられることです。自己効力感とは、困難な状況や課題に対して「自分ならできる」と感じられる力のことをいいます。
自尊心や自己効力感が高い人は、難しい局面においても「自分なら乗り越えられる」と信じ、粘り強い取り組みが実現しやすくなります。
前述の通り、レジリエンスとポジティブ思考は異なるものですが、レジリエンスが高い人は「ポジティブ思考」をうまく取り入れています。
誰しも難しい局面においては「本当に乗り越えられるだろうか」「自分にはできないのではないか」とネガティブな思考に陥ってしまうものです。しかし、そのような状況においてもレジリエンスの高い人はストレスを一旦受け止めた上で、ポジティブな思考に変換していけます。
「きっと解決の糸口をつかめるだろう」、「時間はかかるかもしれないが乗り越えられる」と考えることで、解決に向けた行動を取ることができます。想定外のできごとに対しても、「自分がステップアップするために必要な機会」と前向きに捉えられれば、積極的に対処していくことも難しくないでしょう。
レジリエンスは決して先天的な資質によるものではなく、トレーニングによって身につけていくことが可能です。レジリエンスを鍛える主な方法は、以下の3つです。
具体的な内容について解説します。
ABCDE理論とは、米国のアルバート・エリスが提唱したカウンセリング理論の1つです。人間のネガティブな感情や行動は具体的なできごと(Activating Event)から引き起こされるのではなく、「物事の捉え方(Belief)のクセ=認知傾向」によって決まるという理論です。
ABCDE理論を活用すれば、感情をコントロールしやすくなります。何か嫌なことがあったとき、もうだめだと自信喪失(Consequence)することは誰にでもあります。大切なのは、ネガティブな感情や行動に対して反論(Dispute)することです。例えば、「成長できるチャンスかもしれない」と考え直し、上司に相談してみる(Effect)など、前向きな行動につなげることが大切です。
考え方は人によってクセがあります。「努力してもどうせ無駄だ」というマイナス思考や、「1つのミスも許されない」といった「全か無か思考」も考え方のクセの1つです。他にも、自己中心的な考え方や、根拠がないにもかかわらず物事を悪く捉える考え方などがあります。
考え方にクセや偏りがあると行動まで支配され、自分自身の首を絞めることにもつながりかねません。そのため、自分の考え方を客観的に把握し、意識して変えてみることが大切です。考え方のクセを自分で理解しておくことは、心の健康を保つことにもつながります。
自尊心を高めるには、自分の長所を知ることが大切です。自分の長所を理解できている人は仕事においても上手に長所を活かしています。
また、自己効力感を高めるには成功体験を重ねることが有効です。困難を乗り越えた経験や、自分自身が成功に導いたプロジェクトなど、小さな成功体験を繰り返すことで自分自身の成長を実感し、自己効力感を高めていけます。
自己効力感を高める方法としては、「代理経験」も効果的です。代理経験とは、第三者の成功体験を真似ることで成果をあげる手法をいいます。成功体験のロールモデルは自分と関係が近い人ほど効果的です。
社会情勢の変化が激しくストレスの多い現代だからこそ、レジリエンスの重要性が高まっています。今後も変化の多い時代の中で、企業が安定した経営基盤を維持するとともに発展していくためには、従業員一人ひとりがレジリエンスを身につけ、逆境に強い組織へと成長していくことが求められるでしょう。
レジリエンスは日々の心掛け次第で高めていくことが可能です。鍛えることによってストレスに強くなることはもちろん、目標達成力を向上させることもできます。
ビジネスパーソンとして安定したパフォーマンスを発揮したい人は、今回ご紹介した方法を試してみてはいかがでしょうか。
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